俺とアイツはかつてライバルだった事もある。

野球を始めたのは小学校3年の頃で地元の野球チームに入った。
アイツはひと月程先にチームに入っていた。
以来ライバルであり親友だ。
正確に云えば本当のライバルとなったのは高校3年の時だけなのかも知れない…。
自分で言うのもおかしいが体も野球の才能もアイツより間違いなく恵まれていた。
ただひとつだけ負けていたとすれば練習と努力は俺だけではなくだれもアイツには敵わないと思う。
小学校の時も中学・高校でも俺は早々にベンチ入りしてレギュラーを獲っていたがアイツはいつも最後にレギュラーを勝ち獲っていた。
努力を続ける事の大切さにもっと早く気付いていれば…。

俺とアイツは同じ高校に入学して甲子園を目指した。
俺は元々投手一筋だったがアイツは高校から監督の勧めもあり投手をやるようになっていた。
1年からエースの俺とアイツの差は徐々に縮まり最後の夏の予選では俺が背番号1、アイツが背番号11と見事に2番手投手となっていた。
しかし、
俺は肩の故障で予選に一度も登板する事はなかった。
チームはアイツの頑張りで準決勝迄進んだがそこで力尽きたがアイツと俺の立場は逆転した…。


今目の前の世界の舞台のマウンドにアイツは立っている。
アイツはあれからもコツコツと努力を重ねてプロとなり日本代表の守護神と言われるまでになった。

結局高校で野球を断念することになった俺を励まし続けてくれたのはアイツだけだった。
黙って弱音を聞いてくれたのもアイツだけだった…。
そしていつも最後の一言が「諦めるな!」だった。

随分時間がかかったがこうしてまた野球に向き合えるようになってアイツの背番号1が「諦めるな!」と訴えかけてくれているようだ。

野球世界一まであと一球…アイツは必ず成し遂げてくれるだろう。
俺の夢に終わった世界の舞台で。





<了>
今木 洛

ONE LIFE