電話が鳴る。

(親友からだ…確か帰国は来週だった筈)
嬉しさ半分不思議さ半分で電話をとる。

「久しぶり!元気か?」

相変わらず元気そうだ。
「うん・・・何とかね・・・ところで帰ってくるのは来週じゃなかったっけ?」

「おぉ そうだったけど急用で早く帰ってきた。」

彼が急用などと口にするのは珍しい。



僕と彼とは小学校からの親友で高校迄ともに野球を続けていた。
子供の頃から彼は神童と呼ばれゆくゆくはプロ野球そしてメジャーの選手にと期待をかけられていた。
僕は常に彼を目標に彼の背中を追いかけていた。
ところが彼の選手生命は高校で絶たれ皮肉なことに僕はプロになってしまった。
一時は野球も何もかもに対して絶望的になっていたいたがもともと僕などより強い心を持っている彼は一念発起してスポーツトレーナーとなるべく留学していたのだ。
本来なら去年帰国の予定だったが1年延長していた。




「急用?」

「うん。ちょっといい話(笑)」

「え?」

「中学の時の"夢"の話覚えているか?」

「え・・・判らない・・・」

「やっぱり(笑)二人で世界で戦うって言う話」



そういえばそんな話をした覚えもあったが・・・
確か彼がメジャーの選手になるって話だった・・・




「いや何となく・・・」

「覚えてないか(笑)・・・世界で戦おうって話。あの時俺が選手でお前がマネージャーみたいな話をしたよな。でももし逆の立場でも二人で行くぞって。」

「え まさか?」

「向こうで通訳とトレーナーができるいい人材がいるってお前の代理人さんには売り込んどいた(笑)」

「・・・」

「もしよかったら俺を雇わないか?最高の人材だぞ(笑)」



僕は感激というか感謝というのか自分でもよくわからない感情に包まれて言葉が出なかった。




親友は続ける
「お前の夢に乗っかって悪いなと思うけどお願いします」

まだ僕は言葉が出ない。

「もう決まっているなら無理は言わないけど・・・それとも俺じゃ不安か?」

そんなことはない。彼は今でも僕の目標なのだ。

「いや・・・こちらこそお願いします。正直不安だらけでどうしようかと思っていたから・・・ありがとう。」

電話口の彼の笑顔が目に浮かんだ。

「こちらこそありがとう!1年留学を延長した甲斐があった(笑)あの決勝以来必ずお前はメジャーリーガーになると信じていたから・・・」

僕はまたもや絶句した。
彼は今日と言う日を信じてさらに1年向こうで勉強していたのだった。



こうして高校以来二人で新たな世界一を目指して戦うことになったのだ。






<了>
今木 洛

ONE LIFE